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コラム

「まだ終わっていない戦い:世界マラリアデーに考える」

4月25日は世界マラリアデー 今日は世界マラリアデーです。マラリアとの闘いは、人類の最も重要な公衆衛生の成功の一つです。過去20年間でマラリア対策に大きな進展があり、推定22億件のマラリア症例と1270万人の死亡を防ぎました。しかし、マラリアは依然として世界で猛威をふるっており、最も重い負担は子供と妊婦にかかっています。 今なお続く、マラリアの脅威 いまだに世界では、2億4900万件のマラリア症例があり、その94%がサハラ以南のアフリカで発生しました。また、世界中で60万8000人がマラリアで亡くなり、そのうち76%が5歳未満の子供でした。私が支援するナイジェリアもマラリアの負担が大きく、毎年約6800万人もの人が感染しています 。また、気候変動は蚊の生息地を拡大し、マラリアの感染リスクを高める可能性があるため、気候変動がもたらすマラリアへの影響についての懸念も高まっています。人間とマラリアとの闘いは、まだまだこれからも続くことが予想されます。 グローバルファンドの役割 私が勤務するグローバルファンドは、エイズと結核に並び、マラリア対策を主なミッションとしています。グローバルファンドは、マラリア対策プログラムに対する国際的な資金の62%を提供しており、2024年6月時点で191億米ドル以上をマラリア対策プログラムに投資しています。 投資の成果:命を守る確かなリターン これらの投資には明確なリターンがあり、グローバルファンドが投資している国々では、2002年から2022年の間にマラリアによる死亡が28%減少しました。これらの介入がなければ、同じ期間にマラリアによる死亡は90%増加していたと推定されます。 マラリア対策の中身とは? マラリア対策は、蚊帳を配布するだけではなく、ケースマネジメント、感染者の治療、季節的マラリア化学予防など多岐にわたる活動を含みます。例えば、ケースマネジメントは、マラリアの診断と治療を迅速かつ効果的に行うことを目的としています。これには、迅速診断テスト(RDT)を使用して感染を早期に特定し、適切な治療を提供することが含まれます 。季節的マラリア化学予防(SMC)とは、雨季の間に5歳未満の子供に抗マラリア薬を定期的に投与することで、感染リスクを減少させる方法です。これにより、最も脆弱な子供たちを守ることができます。コミュニティレベルでの活動も非常に重要です。地域の保健スタッフやボランティアが蚊帳の配布、啓発活動、早期診断と治療の提供を行い、住民の意識を高めることで、マラリアの予防とコントロールを強化します 。 世界マラリアデーにあわせて:現場のストーリー 今日の世界マラリアデーと併せて、グローバルファンドがマラリアを含む感染症対策の現場の様子を、多くの写真と併せて、こちらで紹介しているので、こちらをご覧ください。。現場で活躍する女性の様子が特にフューチャーされています。いかにマラリア対策が、多様な人々のたゆまぬ努力とコミットメントで成り立っているか、理解が深まると思います。 グローバルファンドの2025年世界マラリアデーの特設ウェブページはこちら。 (辻井 一晃)

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「ダボス2025の展望:不確実性の時代を乗り越えるイノベーション」

世界経済フォーラム(WEF)に5回目の参加となったダボスでは、今年もこの独特なエネルギーに圧倒されました。異なる業界や国々の最も影響力のあるリーダーたちが集まり、世界の喫緊の課題について議論するこのイベントは、世界情勢のバロメーターとしての役割を果たしています。公式な招待者は3,000人ですが、それをはるかに上回る30,000人以上が小さなスイスの町を訪れ、公式セッション以外のサイドイベントに参加しました。今年は、当方のCEO及び理事長のサポート役として参加し、これまでで最も多くの人が訪れた歴史的な年を目の当たりにしました。 今日の世界は、地政学的危機、不安定な政府、自然災害に満ち、不確実性が深まっています。歴史が示すように、不確実性が高まるほど、人々はダボスに集まり、世界の動向を確認し、洞察を得て、人脈を築きます。今年のテーマは 「インテリジェント時代の連携」 であり、人工知能(AI)と新興技術が産業と社会に及ぼす変革的な影響が強調されました。以下、特に印象に残ったセッションの考察を共有します。   1. 米国新政権に対する大きな不確実性 ダボスは米国大統領の就任と重なり、新大統領がフォーラムにテレビ電話で参加し、スピーチを行いました。その内容はダボスの精神とは正反対でした。化石燃料の使用拡大、そしてパリ協定からの離脱を主張し、さらには関税引き上げを示唆し、多様性、公平性、包括性(DEI)の取り組みを軽視しました。 この姿勢に対して、多くの参加者は沈黙を守りましたが、一部の企業リーダーや国々は引き続き多国間主義と国際協力へのコミットメントを強調しました。気候変動は依然として多くの参加者にとって主要な関心事であり、一国主義的政策と集団的な地球規模の取り組みとのギャップが広がっていることが浮き彫りになりました。   2. 気候変動は現実であり、即時の対応が必要 ダボス経済会議が毎年発表する「グローバルリスク報告書」 では、900人以上の専門家の見解に基づき、驚くべき現実が示されました。短期的には地政学的リスクが支配的ですが、長期的なグローバルリスク上位5つのうち4つが環境に関するものでした。 企業はもはやサステナビリティを道徳的義務としてだけでなく、経済的必然性として捉えています。気候変動対策の欠如によるリスク—サプライチェーンの混乱から保険危機に至るまで—は無視できないほど現実的になっています。多くの企業が、自社のビジネスモデルに持続可能性を組み込み、脱炭素化が回復力と競争力を強化することを認識しています。 特に印象的だったのは保険業界の意見です。一部の経営者は、近い将来、気候災害の増加により高リスク地域の住宅保険を提供できなくなる可能性があると警告しました。この懸念は、環境リスクを軽減するためのシステム的な解決策の必要性を浮き彫りにしました。   3. 気候と健康のつながり 今回の議論の中で印象的だったのは、健康がこれまでのように単独で語られるのではなく、特に気候変動をはじめとする環境要因と深く結びつけて議論されるようになっていることです。大気汚染は健康に直接的な影響を与えますし、気温の上昇は特に脆弱な方々に大きな負担をもたらし、熱中症の発生が過去最多となるほど増えていることが報告されました。 また、気候変動は感染症の広がりにも影響を及ぼしています。洪水が発生すると、コレラのような水を介した感染症のリスクが高まりますし、気温の上昇によって蚊の生息域が広がることで、黄熱病やマラリア、デング熱などの病気がこれまで影響を受けていなかった地域にも広がります。さらに、気候変動とさまざまな要因が重なることで、動物から人へうつる病気を含め、さまざまな感染症が広がるリスクが高まると言われています。 Gaviはさまざまなセッションの中で、ワクチンが気候変動への適応策として重要な役割を果たすことを強調しました。実際、Gaviのワクチンの約半分が気候に関連した感染症に対応するものです。また、ワクチン接種は入院を減らし、医療分野からのCO2排出量を抑えることで、気候変動の緩和にも貢献します。現在、医療分野は世界のCO2排出量の約4%を占めるとされています。 このように、Gaviはワクチン接種を強化することで、気候変動による健康課題によりよく備えることができると訴えていました。   4. 技術:最大の平等化要因であり、分断要因でもある 政治的対立—左派と右派、米国とヨーロッパ、ウクライナやガザをめぐる国際紛争—にもかかわらず、ダボスでの一つの共通認識は明確でした。それは、テクノロジーが前例のない速度で世界を変革していること、そしてAIがこの革命の最前線にあること です。 ダボスのメインストリート 「プロムナード」 は、最新のイノベーションを誇示するAI企業の広告で埋め尽くされていました。しかし、華やかな看板や大規模な発表の裏には、不確実性が漂っていました。多くの企業がAIに莫大な投資をしていますが、実際にどのような課題を解決するのか、依然として模索中です。AIが自社の業界にどのような影響を与えるのか—もはや未来の話ではなく、喫緊の課題となっています。 AIは単なるビジネスツールではなく、地政学的な資産としても認識されています。   5.新興大国の台頭 米中競争に注目が集まる中、ダボスではより多様な現実が明らかになりました。サウジアラビア、UAE、カタール、インド、インドネシア は、投資や人材を惹きつける場としてダボスを活用し、新興大国としての地位を確立しつつあります。次回の G20ホスト国である南アフリカ も、大型パビリオンを展開し、世界的リーダーシップへの野心を示しました。 これらの国々はもはや「招待される側」ではありません。彼らは積極的にストーリーを作り、世界の影響力の未来は西側諸国だけのものではないことを証明しています。   ダボスの魔法 ダボス2025は、技術革新、環境持続可能性、地政学的変化 の複雑な相互作用を浮き彫りにしました。これらの課題を乗り越え、機会を活かすためには、これまで以上に協力が必要です。 ダボスはいつも私を魅了します。これほど多くの意思決定者が一堂に会する場所は他にありません。計画的な出会いもあれば、偶然の出会いから素晴らしいアイデアが生まれることもあります。Gaviが25年前にダボスで発表されたことを忘れてはなりません。 今年、最も印象に残った出来事のひとつは、偶然ホテルのロビーでパプアニューギニアの国家元首と出会い、ドローンを活用したワクチン配送についてお話しする機会をいただいたことです。こうした思いがけない会話が、変革的なソリューションにつながる。それが「ダボスの魔法」ではないでしょうか。 (長嶺義宣)

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